印刷方式【いんさつほうしき】

印刷の方式には様々なものがあるが、ここでは代表的な4つをあげる。

■平版印刷

平版印刷は、水と油が反発しあう原理を使った「凹凸のない平らな版による印刷方式」のことで、主にオフセット印刷のことをいう。版材コストが安く、品質が安定しており、一般の印刷物では現在主流となっている。

オフセット印刷の刷版は、画線部(絵柄、文字の部分)が親油性、非画線部(印刷しない部分)が親水性になっている。印刷時には、版上にインキを供給すると同時に水を供給する。画線部(親油性)にはインキがつき、非画線部(親水性)には水がつく。水がインキを反発するため、非画線部にはインキがつかない。

画線部のインキは、ブランケットというゴムの胴に転写され、これをさらに用紙に転写し印刷する(インキがいったん版から離れてまた転写されることから「オフセット(off set)」という)。絵柄が反転し、さらに反転するので、刷版の絵柄は正像になっている。版の確認作業が容易で、このこともオフセット印刷が発展した理由のひとつ。

近年登場した「水なしオフセット印刷」は、水を使わなくても非画線部にインキがつかない版材を使用する。印刷時に版上に水を供給しないので、オフセット印刷にはつきものの水に関するトラブル(紙伸びによる見当ずれ、インキの乳化など)が起こらない。水なしオフセットの印刷機は、摩擦により印刷胴が高温になるので、内部を水流で冷却する装置が取り付けられている。

■凸版印刷

印刷したい部分が凸状になっている版を使って印刷する方式。凸部についたインキを用紙に転写し印刷する。そのため、印刷版の絵柄は逆像になっている。活字を組んだものを印刷機にとりつけて印刷したことから「活版印刷」ともいう。

現在では活字を組むことはほとんどなく、製版フィルムを樹脂に焼き付けて作る樹脂版がほとんど。マンガ雑誌の本文は、樹脂版を使った輪転機で印刷されているものがある。

活字はすぐに磨り減ってしまうので、組んだ版に紙を押し当てて「紙型(しけい)」という保存版を作り、これに鉛を流しんで版を起こして印刷した。

■凹版印刷

印刷したい部分を腐食させてへこませた銅版を使う印刷方式で、主に「グラビア印刷」のこと。版にインキをつけたあと、余分なインキを取り除き、凹部に残ったインキを転写して印刷する。

印刷版は高価になるが、耐久性があり、週刊誌の口絵のような大ロットの印刷に向いている。ポテトチップスなどのパッケージや、壁紙などもグラビア方式で印刷されている。インキをベタッと刷れるので、高級感のある仕上がりになる。

文字などの線画表現は苦手で、版の構造上、印刷された文字はふちがにじんだような仕上がりになる。
参考記事:グラビア印刷の文字画線部の特徴

■孔版印刷

微細な穴を開けた、布などの素材でできている版を用いて印刷する方式で、「シルクスクリーン印刷」ともいう。版の上にインキをのせて、上からこすることで穴から出たインキが印刷される。

他の印刷方式では印刷できないもの、例えば布やプラスチック素材などは、この方式で印刷する。Tシャツや駅の案内板、パソコンのキーボードなど、工業製品向けに多く採用されている印刷方式。