印刷用紙【いんさつようし】

一般の商業印刷用の印刷用紙には、次のようなものがある。

■塗工紙

上質紙などの原紙の表面に、白色顔料を塗布したもの。塗工量が多いものから「スーパーアート」「アート」「コート」「微塗工」に分かれる。塗工面に微細な凹凸を作り、つや消し状にしたものが「ダルアート」「マットコート」。塗工量の多い方が、表面が平滑で白色度が高い。

塗工紙は、写真などの色再現性が良いので、パンフレット、ポスター、カタログ、チラシなど、カラーの印刷物に多く使われる。白色顔料は時間が経つと酸化して黄変するので、長期にわたり販売する印刷物の場合は、白地の目立たないデザインにするか、表面にPP貼りを行う。

■非塗工紙

表面に何も塗工していない用紙。「上質紙」「中質紙」「色上質紙」「書籍用紙」など多数。光沢がなく目が疲れにくいので、書籍の本文の印刷に向いている。筆記性が良いので、学習参考書、ノートなどにも使われる。

■用紙に関するいろいろ

・用紙には、「常備在庫品」と「受注生産品」がある。常備在庫品は、発注を見越してある程度の量をメーカーが在庫している。受注生産品は、印刷会社などから発注があってはじめて生産するもの。受注生産品でも、過去に生産した分をメーカーが在庫していることはあるが、まとまった量の場合は事前に発注をかけなければならない。発注して抄造が上がるまでに1~2ヶ月かかる。また、常備在庫となっていても、メーカーでは在庫を絞っているため、事前に確認をしておいた方がよい。

・塗工系(アート、コート、マットコートなど)や、非塗工系(上質紙、書籍用紙など)以外の用紙を、「ファンシーペーパー」とよんで、それらと区別する。ファンシーペーパーは、地色、地紋がついていたり、エンボス加工が行われていたりして非常に高価なため、書籍のカバー、表紙、扉などに部分的に使用する。

・用紙に異物がすき込まれていて、小さな点状の汚れのように見えることがある。再生紙では古紙に含まれたインキなどが残っていることが原因で、性質上、ある程度はやむを得ない。再生紙に限らず、抄造ロットによってはこのような汚れが発生する場合がある。大きなゴミがあるものは用紙メーカーに伝えて交換をしてもらう。

・用紙の中には、厚さにムラがあるものがある。例えば、表裏にまたがって見開きの色オビなどを印刷する際に、表面はきれいに印刷できるが、裏面ではムラが出る。用紙を違うものに交換して印刷すると表裏ともきれいに印刷できたとすると、用紙の厚さムラの影響で印刷ムラが出たということが分かる。ただし、厚さのムラはその用紙の仕様であったり、前述の異物も製紙会社の品質基準をクリアしていたりするので、一概に用紙が悪いとは言い切れない。

・アートポストなど表面塗工層の厚い用紙や再生紙は、紙粉が多い。紙粉はヒッキーの原因になるので、これらの用紙でベタの印刷がある場合は注意する。

・用紙の短辺の長さがまちまちで数枚ごとに大きく違っていると、両くわえの両面印刷機では反転時に用紙を上手くくわえられず、印刷ができないことがある。

・マット系の用紙ではインキの裏付きに注意する。マット系用紙は、表面をつや消しにするために平滑性を落として製造されている。光の乱反射でインキ濃度が落ちて見えてしまうため、印刷時にはインキを盛って印刷する。インキを盛ればその分インキ皮膜層は厚くなるので、裏付きを起こしやすくなる。ナチュラル系のファンシーペーパーも同様。

・マットポストやコートカードのような板紙にベタの絵柄を印刷する場合は、やはり裏付きしやすいので注意が必要。板紙の場合は、排紙部で用紙があばれてこすれ合うことも裏付きの原因になる。板紙で絵柄がいっぱいまである場合は、用紙をひとまわり大きいものに変更してくわえ尻側に白を多く残し、用紙があばれてもよい部分をつくることで裏付きを回避する方法もある。