印刷物を作る過程で、ムダになってしまった用紙を「ヤレ」もしくは「ヤレ紙」とよぶ。
ヤレは、印刷の際に見当合わせや色調整で使用した用紙を指すことが多い。ヤレは印刷はされていても製品にはならない(見当が入っていなかったり、色がうまく出ていないため)。このヤレ紙は、必ず発生するものなので、印刷会社では実際の印刷に必要な用紙よりも多く紙を仕入れる。これを予備紙という。
印刷工程に入る前に発生するヤレもある。例えば、用紙販売会社から紙が入荷した段階で、まれにワンプ(用紙を包んでいる包みのこと)ごと折れ曲がっていたり、用紙の水分量がバランスを欠いて「おちょこ(おちょこのように四辺がそっくりかえっている)」になっているものがある。こういった用紙は印刷機を通らないので、ワンプを開封する前に返品をする。ちなみに、ワンプを開封したあとは、よほどのことがない限り返品することができない。ただし、開封しないと判明しなかったような用紙は返品が可能。
ヤレは廃棄するのが基本だが、印刷会社によっては「ヤレ通し」という作業のために保管をする場合がある。通常、印刷工程での見当、色調整は予備紙を使って行うが、予備紙が少ない場合、裏白のヤレ紙を使って見当、色の調整を行う。ただし、ヤレは印刷機を一度通っているのでスプレーパウダーがついており、ヤレ通しはヒッキーの原因になる。
また裏白紙ではなく両面に印刷されたヤレで調整を行うと、ヒッキーの原因になるのはもちろん、白紙部分と印刷面でのインキ転移不良がおこり、インキつぼの調整がうまくいかない。ヤレ通しは「ヤレ混入(製品にヤレ紙が混じってしまうこと)」の原因にもなるので、できるかぎり行わない方がよい。
製本など、印刷の後工程でもヤレは発生する。折りの工程では折り位置の調整を行う際にヤレが発生するし、本文を表紙でくるんで綴じる際にも調整のためにヤレが発生する。そのような理由で、印刷時には実際の部数よりも多く印刷を行い、製本予備として製本部門に送る必要がある。