PDF/X-1a規格のPDFをInDesignから書き出せるようになったおかげで、PDF入稿のトラブルは少なくなった。ただし、印刷に関する認識不足から起こるトラブルは、いまだに多い。いくつか例をあげる。
■ノセ・ヌキ設定の不備
通常であればノセの指示をするところが、ノセになっていない。例えば色ベタ上のスミ文字などは、ノセにしないと版ずれを起こしたときに白いすき間が出てしまう。また、白抜き文字がノセの指定で作られていることがある。この場合、白抜き文字は出力すると消えてしまう(出力紙は白抜きに見えていたりする)。ノセ・ヌキは、出力プレビューで確認できるので、事前に確認することが必要。
■画像の不備
本来、グレースケール、もしくは2階調になっていなければならない画像が、CMYK画像になっていることがある。書籍のモノクロ本文をスキャナーで取り込んで紙面に載せようとする場合、CMYK画像のままだとスミ文字をフルカラーで印刷することになる。小さな画像であれば気にならないが、大きく拡大している場合は格好が悪い。他にも細い罫がCMYKでできていたりすると、印刷時に少しのズレで見栄えの悪いものになる。
■印刷会社間のRIPバージョン違い
一方の印刷会社では何のトラブルもなく出力できたのに、もう一方の印刷会社でエラーが起こることがある。例えば4色プラス特色の印刷物で、特色をノセ指定しているデータが、出力すると一方ではノセになり、もう一方ではヌキになる。RIPのバージョン違いで、このようなことが起こる。
下版直前の最終データとしてのPDF入稿なので、これらの確認もれは致命的なものになる。制作者側にも印刷知識が求められるし、印刷会社もPDF入稿での確認事項を徹底し、トラブルを回避しなければならない。また、印刷会社で出力確認をするのであれば、その分の対価は当然頂戴するべきものだと考える。